地震による水損防止と、BCP対策に最適

スプリンクラー消火設備において、地震による水損被害をニュースなどで目にしたことがある方も多いでしょう。
現在普及しているスプリンクラー設備は、湿式スプリンクラー(配管内に水が充満している)が全体のおよそ90%を占めると言われます。
そのため、地震によって配管に亀裂・破断・スプリンクラーヘッド損傷などのダメージが生じると、水損に直結することになります。
また、地震によってスプリンクラー設備の水損が発生すると、消火水槽の貯留水が減少します。
昨今ではBCP対策が話題になっていますが、利用可能な水が減少することは、非常時では追い打ちとなってしまいます。
しかし、当社の「真空スプリンクラー設備」では、そのような事態を回避することが可能です。

「真空ポンプ」が水損を防ぐ要!

「真空スプリンクラー」という名称の通り、この設備で最も重要なものが「真空ポンプ」です。
真空ポンプによって配管内を真空状態にし、それを保つことで、配管が破損しても常に空気を吸い込もうとする働きが生じます。
これにより、大規模な水損を回避できるのです。

配管やスプリンクラーヘッドが破損しても、真空状態を維持するためにポンプが稼働することによって、水が漏れ出るのではなく、外気を吸い続けようとします。

強い地震がスプリンクラー設備に与える影響

スプリンクラー設備に関して、地震によって引き起こされる最大の被害は「水損」です。
冒頭でもふれましたが、フロアが水浸しになってしまい、商業施設などでは商品に損害が出てしまいます。
水損の原因は、2パターンに分けられます。

①配管の断裂

地震による振動で配管が断裂してしまう理由として、配管の接続が「ねじ切り工法」で実施されていることが起因します。
ネジ切り部の配管の厚みは、どうしても他より薄くなってしまい、地震の振動による負荷が集中し、耐久力の低い箇所から断裂に至ってしまいます。

②スプリンクラーヘッドの破損

ヘッドの破損は、地震発生時の天井部の揺れとスプリンクラー配管の揺れの差異が起因します。
異なる揺れによって、天井材とスプリンクラーヘッドに擦れ・衝突・歪みが生じてしまい、損傷に繋がります。

③事例

2021年2月13日には、福島県や宮城県において最大震度6強を観測する地震がありました。
「国立病院機構 宮城病院」では、外来棟の給水配管やスプリンクラー設備が破損。院内の複数箇所で漏水が発生し、医療器具に被害が出ました。その他にも建物の壁や柱に亀裂などの損傷や、断水を引き起こしました
救急患者を24時間態勢で受け入れていた病院が、診療再開まで1週間ほど機能が低下する事態は、病院関係者様と患者様の双方に打撃を与えました。

【参考文献】
地域医療にも地震の影響 宮城の病院、施設損傷で外来休診 (産経新聞 2021年2月16日) https://www.sankei.com/article/20210216-L23OR3GBA5MWFBTQ6BWSOSY7WU/
宮城病院が外来停止 建物水浸し機器損壊 宮城・山元 (河北新報 2021年2月16日) https://kahoku.news/articles/20210216khn000031.html

真空スプリンクラー設備は、一体どのようにBCP対策として成立するのか?

BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Plan)の略称で、災害等の緊急事態時でも企業への損害を抑え、事業継続または早期復旧を図るための施策です。
本設備は、BCPにおける根幹を担ったり、直接的効果をもたらすものではありません。
しかしながら、上述した水損を回避する能力があることで、地震などの非常時でも事業やサービスの継続を担保する事ができるのです。
過去の地震災害における火災について少し見てみます。

1995(平成7)年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、震災後の火災が被害拡大の一因となりました。
内閣府の「教訓情報資料集」によれば、出火原因の判明した火災で最も多かったのは、「電気火災」だったとのことです。これは停電後の復電が起因しています。

【参考文献】
阪神・淡路大震災教訓情報資料集【04】火災の発生と延焼拡大 http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/data/detail/1-1-4.html

2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災では、津波の影響も相まって、火のついた漂流物による火災、自動車等の塩水によるショートなど、特殊な被害の拡大が見られました。
総務省消防庁の「平成23年版消防白書」によれば、上記のような特殊な出火原因のほか、電気配線の半断線、電気ストーブの転倒または可燃物のストーブへの落下なども出火原因として報告されているとのこと。
地震が発生した後に、様々な要因で火災が生じており、一概に「これだけ気をつければ良い」と言えない事が分かります。

【参考文献】
平成23年版 消防白書 2 火災 https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h23/cat-2/2/509.html

地震の発生にともなう火災は、避けて通ることはできないものだと考えられるでしょう。
また東日本大震災からは、地震以外の別の要因や、複合的な連鎖によっても火災が発生、拡大する可能性があることを忘れるべきではないと言えます。

水損回避だけが目的ではない、一歩先を見据えた防災設備

地震による火災について触れてきましたが、ここでBCP対策における「真空スプリンクラー設備」の真の付加価値について述べたいと思います。
本設備は、真空ポンプを用いて配管内の真空状態を維持することで、配管損傷や誤作動による水損を回避する事が主目的です。
災害時、本設備を導入している建築物においては、地震による水損を回避し、出火した際には作動する。純粋なスプリンクラー設備としての役割が求められる一方、火災が発生しなかった場合にも、役立てることができます。
それが、「非常時の水源利用」です。

例えスプリンクラー設備としての役割が果たされなかったとしても、非常時の水源として活きる意味は大きいと考えます。
最も普及している「湿式スプリンクラー設備」では、地震による漏水または誤作動が生じた場合、消火水槽の水をすべて放出することになってしまう場合があるのです。
非常時の生活用水や、近隣の小規模火災対応のための水源利用など、必要に応じて災害後の対応に転換できるという利点は、決して無意味ではないでしょう。

「もしかしたら」というその時が来るまで、その価値を図り辛い点が防災設備の運命ではあります。
しかし、昨今の地震問題に焦点を当て、本来の目的以外の二次利用、三次利用に転用可能な設備を選んでいただくことで、社会における安心と安全に寄与できたらと、我々は考えております。